ヘッドレスCMSの概念と特徴

ヘッドレスCMSは、コンテンツの管理機能(バックエンド)と、その表示機能(フロントエンド)を分離したアーキテクチャのこと。

このシステムでは、マルチデバイスへの対応が容易になり、API(Application Programming Interface)を介して、コンテンツをウェブサイト、スマートフォンアプリ、デジタルサイネージなど、さまざまなチャネル・デバイスへ配信できる(Content as a Service)。また、この分離は、フロントエンド開発における技術選定の自由度向上、表示速度の高速化、セキュリティリスクの軽減といった効果も見込める。

デジタルコンテンツへ触れる機会が多様化している現代においては、ユーザに対し、一貫性のあるメッセージやエクスペリエンスを提供する重要性が高まっており、ユーザーがどのタッチポイントにいても、その状況やデバイスに最適化された形で情報を提供できることは、単に新しい技術システムを採用するという以上の意味を持つ。

コンテンツとプレゼンテーション層の分離については、WordPressにおいてもテーマ機能やブロックエディタの導入などで意識されている。すなわち、ページのテンプレート化や構造化によって、テーマを変更しても画面が崩壊しない堅牢性を持たせている。

ただ、これはWordPressエコシステム内での柔軟性を提供するものであって、同じテーマ、同じプラグイン群という共通の実行環境を前提としている。そのため、ページが生成される際には、バックエンドがコンテンツを取得→テーマのテンプレートを用いてフロントエンドに表示するという一連の処理が、ページへのアクセスごとに不可分に行われ、依然として密結合な関係にある。
これによって、リクエストごとにPHPの実行とデータベースアクセスが発生することとなり、パフォーマンス上の制約を受けることになる。

このパフォーマンス上の課題に対し、独自のレンダリング、状態管理、コンポーネント指向アーキテクチャを持ち込むことで解消しようというのが、ヘッドレスCMS化の目的である。